phoka

08.

2020.05.02.

この家に来て初めて火を焚いた。

焚き火の匂いは、記憶の宝箱。
メキシコの森、祭りの暮らし、何気ない日々の中。
青春の思い出はいつも、この燻された匂いに包まれている。

北メキシコの荒野で24歳の誕生日を迎えた時も火を焚いていた。
じっと黙って、ただただ火を見つめ朝を待った。
その時火から教わったことが、今夜はふわりと香った。

火を焚く行為を失ってはいけない。
なぜなら、火は祖父であるからだ。
これは自論だけれど、確信している。

太古の祖先と同じ行為をし、大いなる智慧に心をゆだね、熾火のきらめきに宇宙を想う。

火を焚くことは、尊い。